行政職の公務員は資格を取っても意味ないってホント?30代後半まで勤めてみて分かったこと
よく行政職の公務員は資格を取っても資格手当も無いし、異動や出世にも有利にならないと言われます。
約20年、行政職の公務員を続けてきた筆者の経験上、資格をとっても出世ルートに乗るわけではないというのは真実です。
実際、これまで社会保険労務士を取得している先輩や、自治体法務検定プラチナクラスを取得している後輩が周囲にいたことがありました。
しかし資格取得した知識が使える課に抜擢された話は聞きませんし、昇任したという話も聞きません。
筆者も若い頃に行政書士試験に合格していますが、同期の中でも昇格は遅い方です。
また、頑張って難関国家資格に合格したのに、なぜかその後辺境の出先機関に異動になった先輩も見たことがあります。
このように、資格に合格するような前向きな職員が、異動や昇任、評価で有利にならないのは理由があります。
役所で出世する人に必要な素質は、残業・ストレス耐性と、上司の意向に従順に従う協調性の高さだからです。
コツコツ資格を勉強するような向上心や探究心がある人ではなく、心身がタフでハードワークやパワハラに耐えることができ、理不尽な上司にも従順についていける協調性がある人が昇任しやすい業界ということなのです。
30代までに、公務員こそ資格を取るべき理由
ここまで公務員の昇任や異動に、資格取得が意味ないことをお伝えしてきました。
しかし今後、多くの公務員にとって、30代頃までに資格を取る、もしくは合格を見据えて勉強を習慣化することが必要になると筆者は予想しています。
多くの公務員が、30代・40代に資格勉強するべきと筆者が考える理由は3点あります。
「うつ病休職」からの「退職」による「突然無職人生」のリスクが高まっているから
近年、「若者の公務員離れ」がよくニュースになっています。
公務員という職種で10年以上キャリアを積むと、民間企業への転職が非常に難しくなります。
市場価値が上がらない上、近年人手不足でブラック職場が増える中、うつ病により働けなくなり、長期休職の後に退職する職員も後を絶ちません。
SNSが普及し、このような事例が見える化されたことで、近年「若者の公務員離れ」が加速しているのですが、実は、昔から公務員職場ではよくあることでした。
筆者も20年近く公務員をしている中で、優秀な先輩が突然うつ病で休職し、リハビリ出勤してはまた休職を繰り返した末に退職していったケースを多々見ています。
これは、一度公務員になってしまうと、違う業界に転職することが難しく「ここしか自分は居場所が無いんだ」と思いやすい環境がメンタル疾患を加速させやすいからではないかと想像します。
パワハラや深夜残業だらけの職場に異動するかどうかは「配属ガチャ」で、勤続10年目以降にいきなり地獄のような職場に配属されてしまう可能性もあります。
異動希望をすることもできますが、公務員の世界では中々職員の希望は通りません。
また異動年限が来る前に本人の希望で異動した人は庁内キャリアに傷がつくのか、その後も人手不足でキツい部署や辺境地の出先機関ばかり異動しているという事例もよくあります。
今は「大転職時代」と言われ、うつ病になるくらいなら転職すればいいという考え方が広く世の中に浸透しています。
しかし実際30代で転職活動をしてみた筆者は、年収大幅ダウンを覚悟しない限り、公務員の転職は厳しいという現実に直面しました。
残酷な現実ですが、公務員として日々の業務にどれだけ真剣に取り組んでも、転職市場では評価されないのです。
うつ病による休職・退職からの無職人生リスクと隣り合わせにありながら、転職も難しい私達にとって、資格取得は切り札になり得ます。
近年、「資格マニアになっても転職には有利にならない」とよく言われます。
市場価値に繋がらない無意味な資格を集めるマニアになることはたしかに意味はありません。
ただ、他の仕事に簡単に転職できない中堅職員以上の公務員にとっては、実は資格取得によるキャリアアップは身を守るための数少ない選択肢になるのです。
公務員から転職するのに有利な資格を取ることは、再現性があるキャリアプラン
筆者が若い頃から、定年退職後に税理士として開業するなど、公務員を辞めたあと士業に転職する先輩は周囲にいました。
いわゆる士業と言われるような業務独占資格が無いとできない専門家としてのキャリアに進む道は、公務員のセカンドキャリアとしては以前からよく聞く事例です。
筆者は以前、有料のキャリアカウンセリングを受けたこともあるのですが、キャリアカウンセラーにも業務独占資格を取得して士業になるキャリアを一つの選択肢としておすすめされました。
近年、生成AIが士業の仕事を奪うと言われています。
しかし我が国において業務の自動化がそう簡単に進まないことは、日頃勤務されている職場状況を見ていれば分かると思います。
公務員というキャリアの選択肢しかない状況から、まずは一歩進むために、業務独占資格を取得することは、長期的にキャリアの幅を広げられる可能性を高めます。
こじらせ系モンスター・仕事しないおじさん&おばさん化を防止
人というのは、「この会社しか居場所がない」状態で働いていると、業務を属人化して自分の存在価値を示そうとしたり、若い人にマウントを取るようになりがちです。
いわゆる、こじらせ系モンスター職員や老害、そして仕事しないおじさん&おばさんの爆誕です。
一方、キャリアを真剣に考え、日々資格の勉強といった自己研鑽や社会変化の情報収集を習慣化している職員は、新しい価値観を吸収することに貪欲で、若手職員とも良い関係が築きやすいです。
また、担当業務以外にエネルギーを注いでいることがあると、業務を属人化して幅を利かせようとする「お局様」化も防止できます。
たとえ資格手当がつかない公務員であっても、資格という目標をきっかけに学び続けることは、自分のキャリアにとっても、組織にとっても、ひいては市民サービスの向上にもつながることなのです。
では、実際に資格取得を目指して勉強するなら、具体的にどのような資格が良いのでしょうか。
次回は、おすすめ資格や勉強を始める時期、勉強習慣を継続するコツについてお伝えします。