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「昇任したくない」公務員が増える今、昇任試験を受けた方が良い理由

秋といえば、「昇任試験」の季節ですね。

自治体によって昇任制度は色々ありますが、公務員の業界で9月〜11月といえば、係長試験や主査試験がある所が多いのではないでしょうか。
筆者の勤務先も今は昇任試験直前で、筆者も昔ヒラの係員だったときは、仕事後帰宅してから必死に勉強をしていました。

しかし近年「若者の○○離れ」ならぬ「若手職員の昇任試験離れ」が公務員業界で課題となっています。

今回は近年顕著になっている「若手の係長試験離れ」のリスクや、「一生ヒラ主任」人生の思わぬ落とし穴についてお伝えしていきます。

目次

「昇任試験受けない」公務員が増加・・・昇任したくない職員の増加が自治体の課題に

近年、若手職員に対し「あの手この手」で係長試験の受験を勧める役所内の動きが活発になっています。

筆者が若手職員だった頃は、係長試験といえば、人事課のような花形エリート出世コースの人が挑戦するごく一部の人にしか関係の無い話。
筆者のような「窓口対応部署」ばかり異動してきた職員にとっては無縁なイベントでした。


ほぼ受からないので、恥ずかしいから周囲には黙ってこっそり勉強する先輩も多く、合格者も毎年数十人しかいない試験。
試験受験年齡が終わった50代に「推薦」のような任用で昇任し、係長でキャリアを終える先輩が周囲に多い印象でした。

筆者は出世街道から外れた「窓口対応部署」にいたので、周囲に試験を受けた上司もおらず、情報が無い中、何年も苦戦し係長に昇格したものです。

しかし近年、後輩から直属の上司との1on1ミーティングで「係長試験受けないの?」とヒアリングされたという声を数多く聞くようになりました。
「係長が有志の勉強会をしてくれるみたい。時間外に少しだけ参加してみない?」といった上司や先輩側からの働きかけまであるようです(羨ましい)。

その理由は、公務員業界で蔓延する、深刻な中堅職員不足です。

先月、愛知県の知事会見において発表された職員の人事制度改革でも、その背景に中堅職員層の中心となる40歳代職員の不足が挙げられています。

・国・他自治体・民間企業等との人材獲得競争の激化や若手人材の早期登用の進展

​・50歳代と比べて40歳代職員が極端に少ない年齢構成であり、次代の組織を担う人材の育成が急務

【知事会見】「働き続けたい、選ばれる愛知県庁」の実現に向けて職員の人事制度をアップデートします ~若手職員の活躍支援と支え合う職場づくりで、人材確保の好循環創出へ~(2026年8月25日)

筆者も、今の部署は40代職員がほとんどおらず、自分含めて数人という印象です。
さらに今の40代はバブル崩壊以降リーマン・ショック期までに新卒就活をしていた世代で、見かけは同年代でも民間企業から転職してきた新規採用職員という方も多いです。
つまり、新卒採用で10年以上役所を経験し「担当者としての仕事は身についてきたし、そろそろ昇任試験受けようか」みたいな中堅職員の数が異常に少ないのです。


そんな危機を前に、愛知県だけでなく、全国のお役所で若手職員に昇任意欲を喚起させるための取組みが行われています。

一方で、若手職員側は(人事課からすると厄介なことに)「昇任したくない」「昇任試験受けない」という声が大多数という印象です。
この傾向は香川県の調査結果でも明らかです。

「昇進」についての考察

将来、グループリーダー等になりたいと思う職員は 34%、管理職になりたいと思う職員は 31%
であった。6割超の職員はグループリーダー、管理職になりたくないと思っているが、なりた
くない理由で最も多いのは、いずれも「ワーク・ライフ・バランスを重視したい」であった。
職員の働きやすい職場づくりに向けたアンケート調査結果報告書(令和5年3月)

香川県の調査では、なんと6割超の職員が管理職になりたくないと思っている結果が出ています。
職階が上がると責任が増え、仕事も増え、ワーク・ライフ・バランスが損なわれるからというのが最も多い理由のようです。

たしかに筆者も係長に昇任してから時間外勤務は増えましたし、今は判断を求められる立場で、自分の判断で業務の方向性が決まることもあります。


40代というと育児真っ盛りという方も多いので、わざわざ昇任したくないと思う若手職員が増えているのも無理は無いでしょう。

しかし私はあえて、若手職員の頃から「万年ヒラ主任」を目指すのは大きなリスクがあることを提唱します。

昇任したくない職員に待ち受ける将来の思わぬ落とし穴

先ほどご紹介した愛知県では、昇任ハードルを大幅に引き下げる「抜擢制度」を来年度から導入すると発表しています。

新抜擢制度の導入

能力と意欲の高い職員の早期登用を進め、将来の組織運営を担う人材を積極的に育成

内容

最速で、20代で主任級、30代前半で主査級、30代後半で課長補佐級、40代前半で課長級への昇任が可能な制度とする。
(2027年度から段階的に実施)

<昇任年齢の目安>

職級現行(※)新制度最速モデル
主任級32歳程度29歳程度(3年程度短縮)
主査級36歳程度33歳程度(3年程度短縮)
課長補佐級43歳程度36歳程度(7年程度短縮)
課長級50歳程度41歳程度(9年程度短縮)

同規模の都道府県である大阪府ではなんと、優秀な主査級職員を一つ上の職階である課長補佐級並みのポスト「グループ長」に任用できる制度案が公表されていました。

人材獲得競争が激しさを増し、また雇用の流動性が高まる中、従来型の新卒一括採用かつ終身雇用による長期間の在籍を前提とした人材育成や昇任管理が困難となってきている。
このような中、より一層、能力・実績を重視した積極的な登用を行うことで、優秀な職員や意欲のある職員のやる気を引き出し、組織力の向上を図る。

<取組み内容>
○社会人等区分で入庁した職員の内部受験による上位職階への登用の検討 【新規】
○主査級職員のグループ長への登用 【新規:R6 年度~】
○ベテラン幹部職員の有効活用策の検討(役職定年制の例外措置等)(再掲)【新規】
○職員の属性の変化や年齢構成を踏まえた昇任年次のあり方の検討 【新規】
組織・人事給与制度の今後の方向性(令和5年8月25日)

つまり昇任試験を受けないまま、万年ヒラ主任でワーク・ライフ・バランスを維持したい公務員が、半ば無理矢理職階を引き上げられる可能性が高まっているのです。

もし昇任の「推薦」を断ったら、自分以外が新規採用職員で「ヒラのまま実質係長」にさせられるケースもあるでしょう。
別に嫌がらせではなく、中堅職員が少なすぎるので結果的に係長が欠員となった部署では、年長者がヒラの給料で実質係長をやらされる未来は容易に想像がつきます。

また万年ヒラ主任でワーク・ライフ・バランスを達成した方も決して「逃げ切り」できる訳ではありません。

定年時に昇任経験の無い先輩方は、定年後は再任用職員や非常勤職員として正職員のサポートをされるケースが多いです。
長年培ったノウハウで中堅職員が少ない職場のフォローもしながら、65歳からの年金支給を待機している印象ですね。

しかし近年、少子高齢化で公的年金制度は制度改革が続いており、老後の年金は65歳から受給できるのかどうか怪しく思う国民も増えています。
そうなると、万年ヒラ主任からの再任用や非常勤職員では定年後の生活はとても「公務員だったから安定」とはならないでしょう。

一方、管理職経験者の先輩は「マネジメント経験を活かして別の組織に転職」というケースをよく聞きます。

統計調査でも明らかなのですが、どの業界でも、50代以降のキャリアを考えると、マネジメント経験が一切無いことは非常にリスキーなのです。

企業の発展にとって最も重要と考える労働者の能力・スキルについて、管理職を除く正社員のうち、50歳未満では「チームワーク、協調性・周囲との協働力」(54.3%)、「マネジメント能力・リーダーシップ」(34.9%)の順に、50歳以上では「マネジメント能力・リーダーシップ」(57.0%)、「チームワーク、協調性・周囲との協働力」( 41.7%)の順に、それぞれ割合が高い。
令和7年度「能力開発基本調査」調査結果の概要

「出世欲無いし、マネジメント経験は積まなくていいかな・・・」という若手職員の方からの声はよく聞きますし、筆者も大昔は思っていました。
しかし、今や一度は昇任してマネジメント経験を積んでおくことは、50代以降のキャリア形成や老後の貧困を回避するための必須スキルなのです。

「若者の昇任試験離れ」が加速する今こそ、早いうちから昇任試験にチャレンジしよう

幸い今は窓口部署しか経験がない筆者のような職員でも、若いうちからチャレンジしていれば昇任試験に合格できる可能性が高まっています。
昔と違い、出世街道にいない職員も昇格してもらわないと、組織の維持が厳しいことがデータとして明らかだからです。

近年は育児・介護と仕事の両立支援も法整備が進み、公務員業界でも「昇任したいけど家庭に事情がある職員」への配慮は必須となってきています。
係長が少なすぎるので、家庭に事情のある職員に必要な配慮をしながら係長候補を育成するのはマストなのです。

昇任を嫌がるのではなく、まず昇任意欲を示した上で、上司や先輩と自分の事情について上手くコミュニケーションを取る方が重要になるのです。

公務員の退職金も一昔前と比べて激減している昨今、公務員だから老後の生活は安泰という訳でもありません。

こちらの記事でも紹介していますが、10年以上公務員を経験すると(労働環境が改善しつつあると言われる)民間企業には転職が難しくなります。

公務員もクビになる?人事評価が最低だった、負け組公務員の20年後はどうなる?

あくまで筆者の公務員人生20年の経験ですが、30代以降に転職した同僚で収入やキャリアアップした方を筆者は見たことがありません。

転職でキャリアアップも難しく、老後安泰と言えなくなってきた時代、昇任することが結果的に自分の将来人生を守る可能性もあるのです。

ただ、かつての筆者のように「自信が無いから万年ヒラ主任」を希望した結果、周囲に試験を受けて昇任した先輩が誰もいないような部署にいる方もいるかもしれません。

そんな方に向けて、次回は昇任試験を独学でクリアした筆者が数年かけて集めた勉強術をお伝えさせて頂きます。

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